サンフランシスコ、アメリカの都市のなかで私の最も好きな街である。そのサンフランシスコの名物のひとつが霧である。霧の中に浮かぶゴールデンゲイト・ブリッジは大変趣があるものだ。全米屈指の美しい街のヒーローが危機に陥っている。ウィリー・メイズ、ウィリー・マッコビー、ホアン・マリシャル、オーランド・セペダと多くのMLBヒーローの系譜の後継者たるべきバリー・ボンズである。通算ホームラン708本、MVP通算7回獲得という栄光の業績が霧ならぬスモッグの中にありその濃さが日に日に増しているのである。
サンフランシスコ・クロニカル紙の記者がまとめたボンズ疑惑追及の本が下旬にアメリカで出版される。日本の新聞報道によると「影の試合」というタイトルのその本は、ボンズのステロイド問題に対する大陪審での発言はウソであること、元愛人にステロイド使用の口止め料を払っていたこと、その上ボンズ同様にステロイド使用の疑惑があるマグワイアの70ホームランに嫉妬し禁止薬物に手を染め使用法に熟知していたなどが書かれているそうである。本来であればMLB史上に残るヒーローであるべき彼がMLB史上に残るヒールになろうとしているのである。
ボンズは先に「野球が楽しくなくなった。周囲で起こっているくだらないこと(薬物使用疑惑)にはうんざりだ」と記者に引退を示唆する発言をして注目された。彼は常に「おれは潔白だ。ずっと潔白だった。」と言ってきたが、アメリカのマスコミは執拗に彼の薬物使用疑惑を追っている。
私が所有している彼のベースボール・カードを見てみると、ルーキー・カードと最近のカードを比較すると身体の大きさの違いは歴然としている。とても長年のトレーニングの賜物では片付けられないとの印象がある。彼の薬物使用疑惑に対する外堀は徐々に埋められてきているが、MLBが昨年発表した検査結果の陽性者に彼の名前はなく、今のところMLBは「クロ」とは言っていない。
昨シーズンはケガのためシーズンの大半を棒に振ったが、ボールパークでのファンの歓声は多く、選手たちも陽気にボンズと会話する姿がよく見受けられている。
今後、MLB自身がボンズを薬物使用でクロとする可能性は非常に少ないと言われている。
さて今シーズンのプレーはどうなるのであろうか?MLBファンとしておおいに気になるところだ。いずれにしても「灰色」のままMLBの選手生活を終えることは間違いなさそうだ。
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