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安さんの鉄博通信 >> No.27 企画展「越境のドラマ」・・峠を越える鉄道の物語・・を開催中

企画展「越境のドラマ」・・峠を越える鉄道の物語・・を開催中

鉄道博物館は、おかげ様で先日10月14日に開館満6周年を迎えることができました。
  この間のお客様は累計で627万人にものぼります。私もお客様に励まされながら活動を続けて来ることができました。
  この開館6周年にあわせて久しぶりの大型企画展「越境のドラマ」が開催されております。鉄道とは文字どおり「鉄の道」と言えます。我が国の特有の地形であり、表日本と裏日本をさえぎる峠越えの鉄道が各地で建設されてきた歴史があります。今回は関東に近いところの信越線碓氷峠と上越線清水峠にスポットを宛て、往時の鉄道建設技術と苦労、工夫などの歴史を一堂に展示いたしました。
  鉄道の本質にせまる博物館ならではの力作を是非ご覧下さい。会期は来年1月13日(月)までです。

  主な内容と私の所見を報告いたします。

鉄道と地域とのかかわり

  • 明治時代中期に鉄道の東海道ルートを補完する目的で信越線(中山道ルート)が建設された経過
  • 峠越えの鉄道開業による長野県と新潟県の変貌

鉄道の弱点、峠越えに挑戦

  • 「人や物を大量に高速で輸送できる」という利点の反面、山登りが鉄道の一番の弱点
  • 地形に対応した工法の開発、運行を維持するための鉄道員の役割と苦心
  • アプト式に代表されるラック式の鉄道

峠にいどむ車両たち

  • 碓氷峠、清水トンネルで活躍した機関車とそれらの進化
  • 線路や施設の改良の歴史、列車の編成と形態の変遷
  • 幻に終わった碓氷峠自走式特急電車(187型式・1985年)

峠越えの今後

  • 新幹線をはじめ新線の建設では、長大トンネルで一気に山を貫通する
  • 鉄道の建設コストをかけても運用コストを低くおさえ、時間短縮をはかる。
  • 峠越えを実感できる鉄道らしい山登りの区間は、改良によって廃止されてしまう
  • 山間部の雄大な景観も一部の山岳鉄道を除き見られなくなる

峠越えの歴史的意義

  • 鉄道が国土を一つに結ぶ社会資産であり、鉄道建設が土木事業の花形であった
  • 専用車両の開発と実用化、改良の経過が鉄道技術の目標であった。今後の鉄道は経済性、信頼性、環境対応などが目標であり、「峠越え」は過去のものとなっている。

その他

  • 鉄道への興味、趣味の対象が車両や列車に偏り勝ちであるが、鉄路の本質に眼を向けた初めての渾身の企画展です。熱心に展示に見入るお客様が絶えません。
  • 入室直後にある鉄道最盛期の日本地図と「越境のドラマの舞台」の解説図は圧巻です。
  • すでに廃線となった碓氷峠の様子が手に取るように解ります。
  • 前述の187型式電車の計画図は今回の特ダネです。
  • スイッチバック、ループ線、ラック式の線路が市販のプラレールと車両で再現されています。とても解りやすい展示物で子供さんが注目しています。

2013/10/17  鉄道博物館ボランティア  安川彰一