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安さんの鉄博通信 >> No.20 絵画展「駅の風景」がはじまりました

絵画展「駅の風景」がはじまりました

今回は鉄道博物館の収蔵品の中から、1970〜80年代の懐かしい駅を画いた水彩画展示会のお知らせです。
  駅は鉄道と人々を結ぶ一番身近な場所であり、街の顔として旅の思い出に重なるところです。
  現代の駅は近代化、合理化された姿のものがほとんどで、プラットホームの上の階に改札口や駅舎が置かれた「橋上駅」という構造になっています。正面から見てもビルや店舗の一部分に昇降口があると言う姿です。加えて、どこに行っても駅の表情に変化が乏しくなっています。
  当時の駅は地面に堂々と構えた、風格ある一個の建物で街の玄関として個性あふれるものばかりでした。従来の展示会は「車両」をテーマにしたものが主体でしたが、「駅」と言う一面から鉄道をとらえたタイムトリップは如何でしょうか。

絵の作者と経過

元国鉄職員で建築設計を担当した故 森 惣介氏(1924年〜2000年)が在職中の1972年頃から晩年にかけて、やがて建替えられてしまいそうな駅舎の姿を残そうと400点あまりの水彩画を制作しました。絵やスケッチと言っても作者の仕事がら精密、詳細なものばかりです。
  今回はその中から180点を選び、展示会の会期を3期に分け期ごとに60点を展示します。
  写真の時代から現代は電子画像があふれる時代に変っていますが、丹念な筆致の絵画は圧倒的な迫力があります。

会期と展示区分

  • 第1期 5月28日〜6月27日 上野駅(1986年)など60点
  • 第2期 6月29日〜8月01日 鎌倉駅(1975年)など60点
  • 第3期 8月02日〜8月31日 東京駅(1983年)、大宮駅(1975年)など60点

展示の特徴

  1. 各作品のわきに、その駅の現在の姿が写真で掲示してあります。おなじみの駅の往時の様子に思いをはせることができます。
  2. 「駅にいる人」のスケッチが何点か展示されているほか、ホームの駅名標、駅弁の掛紙、お茶の土瓶など当時の風物も一部が出品されています。
  3. 「駅舎建築の変遷」というコーナーもあり、明治期からJR化後の建築まで時代区分や建築様式の概略が分かります。
  4. 埼玉県の駅では「大宮」「桶川」「鴻巣」「吹上」「本庄」「指扇」「南古谷」「武蔵高萩」の8駅が3期に分けて展示されます。

その他

  1. 会場では、記憶のある駅の姿に再会してしばしたたずむ人、大発見の連続になかなか動けない人が目立ちます。「わー いいなー」との声も聞こえてきます。
  2. 同時発売の図録には3期分の180駅が収録されており、圧巻です。3回見たくなるようです。
  3. 「絵」と言うやさしく柔らかい手段ですが、語りかけるボリュームは物との比ではありません。どうかご一見願いたいところです。

2011/06/03  鉄道博物館ボランティア  安川彰一